Vol.21〜人と地球も健康に プラネタリーヘルスという視点〜
みなさんは、「プラネタリーヘルス」という言葉を聞いたことがありますか。まだあまり耳慣れない言葉かもしれませんが、実はこれまで私がこのコラムでお伝えしてきたことと、決して遠い話ではありません。
MiMCはブランド設立当初から、ミネラルや植物、果実など、厳選した天然由来成分を用いたものづくりを続けてきました。スキンケアだけでなく、メイクアップのカテゴリーにおいても、“人にも自然にも無理のない美しさ”を追いかけてきたのは、肌・身体・心は、自然と本来切り離せないものだと感じてきたからです。そして今、あらためて考えていきたいこと。それが、「プラネタリーヘルス」という考え方です。
人の健康は、地球の健康あってこそ
プラネタリーヘルスとは、人の健康や幸福は、それを支える地球の自然システムの健全さの上に成り立っている、という考え方。2015年にWorld Health SummitやThe Lancetの提言を通じて広く知られるようになった概念ですが、私がこの言葉に強く惹かれたのは、これを医療現場の最前線にいる医師たちが声をあげていることに大きな意味を感じたからでした。昔から、自然の大切さや環境と健康のつながりは、民間療法やおばあちゃんの知恵的な経験値として語られてきました。でも今、医療や科学の側からも、病気を治そうとした時に、“人” だけを診ても治療に限界がある」と言われ始めていて、その変化は、とても象徴的だと感じています。
プラネタリーヘルスについて積極的に発信している、医師であり友人でもある桐村里紗さんは、「人を治そうと思ったら、地球の健康まで考えないと、本当の意味では健やかにできないことに気づいた」と話してくれました。その言葉を聞いたとき、すっと腑に落ちるものがあったのです。肌のことも、身体のことも、心のことも、結局は気候や社会のあり方まで含んだ環境の中で起きていること。私たちはつい、自分だけを整えようとしてしまいますが、本当は外側の世界と常につながりながら生きています 。
プラネタリーヘルス概念図(出典:Forbes JAPAN)
みなさんの身近な経験でいうと、コロナです。コロナ禍を経て、何気ない日常がどれほど尊いものかを知ると同時に、人は環境と切り離せない存在なのだということを、多くの人がそのことを実感したのではないでしょうか。あらためて思い知らされた経験があるからこそ、できることから動き出す必要があると感じています。
もう守るだけでは間に合わない。“再生”
ここでもう一つ、みなさんに知っていただきたいのが、「プラネタリー・バウンダリー」という言葉です。環境省のサイトにも掲載されている内容で、これは、地球環境が安全な範囲に収まっているかどうかを示す、いわば“地球の健康診断書”のようなもの。
地球の安定を支えている9つの重要な仕組みとして、気候変動、生物圏の健全性、生物地球化学的循環(窒素・リンの循環)、土地利用変化、淡水変化、海洋酸性化、成層圏オゾン層の破壊、大気エアロゾル負荷、新規化学物質等(ノベル・エンティティ)が挙げられています。そしてこの9つのうち、なんとすでに7つの項目で限界を迎えている、あるいは超えてしまっていると言われているのです。そう考えると、地球の健康は決して先送りできる状態ではないのだと感じます。
これからの私たちは、どんなアクションをしたらよいでしょうか。「守る」だけではなく、「再生する」という発想が大切になってきます。サステナブルという言葉は認知が広がり、自然を壊しすぎないこと、これ以上悪くしないことを目指してきました。もちろんそれは大切です。けれど、すでに多くのものが失われ、枯渇し始めている今、それだけでは間に合わないのかもしれません。これから大切なのは、リジェネレーション、つまり再生です。失われた循環を取り戻し、よりよい流れへと立て直していくこと。自然を保護するだけではなく、人が関わることで、むしろ人も地球も健やかになっていくような仕組みをつくることです。MiMCでも、リジェネレーションの取り組みとしてフレグランスに使用した素材の残渣を使ったお香づくりのワークショップを始めました。原料として使用した素材を次の形に変え、土に戻すまでを一連の流れとして使用する。そんな試みです。
このテーマは理想論やボランティアでは続かないのがとても難しいところ。環境も、経済も、人の暮らしも、すべてつながっていて、今の社会は、経済活動をすればするほど自然が枯渇してしまう構造になっています。でも、本質はそうではないはず。人の幸せとは何か、本当の健康とは何か。お金だけが満たされれば、それで幸せなのか。そうではなく、心身が健やかで、自然とも無理なく共生できることを目指すために、企業として個人としてできることを考えていかなければと、逡巡する日々です。
自分の心と向き合う時間が、地球を守る第一歩に
悩んで立ち止まっていても解決はしないので、まず一人ひとりが本質的な視点をもち、ひとつでもできることを考えていきたいと思います。私はその答えもまた、プラネタリーヘルスの延長線上にあると感じています。
私たちはつい、数値で健康を見てしまいがちです。もちろんそれも大切なことですが、一方で、たとえばホルモン値は心が揺れれば簡単に揺らぎます。イライラすると呼吸が浅くなり、眠りの質が落ち、食べ方や感じ方まで変わってしまう。身体だけ、心だけを切り離して整えることは、本当は難しいのだと思います。その視点が、これからますます大切になるはずです。
MiMCでは、その実践のひとつとして、福利厚生の一環でヨガを取り入れています。会議の前に、呼吸を整える時間を持つこともあります。1日のはじまりにこの呼吸法を取り入れると、落ち着かなかった心が静かになり、頭の中が少しずつクリアになっていくのを感じます。忙しい日ほど、自分の内側に意識を向けることは後回しにされがちですが、実はそういうときこそ、自分を整える時間が必要なのだと思います。心と身体のつながりを取り戻し、自分の感覚をもう一度信じられる状態に戻していくこと。その小さな積み重ねが、結果として人との関わり方や、社会とのつながり方、地球への向き合い方に変わっていく第一歩なのかなと思います。
これまでずっと伝えてきたことではありますが、何を使うかだけではなく、それがどのようにつくられているのか。どんな原料を選び、どんな環境や社会の上に成り立っているのか。使う人にとって心地よいだけでなく、その背景にある自然や未来にとっても無理のない選択であるのか。一つひとつの選択が、自分の健康と地球の健康につながっているのかも。MiMCを手にとっていただくことが、そんなことを考える小さな一歩になったら幸せだなと感じます。
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