Vol.14 ~異なる文化へのオマージュ~
ブルガリアデザイナーとのコラボレーション
大阪・関西万博が無事閉幕しました。開幕前の評判とは裏腹に、終盤はとても盛り上がり混雑していたようですね。私も9月末に会期大詰めの万博へ行ってきました。目的はブルガリア共和国パビリオンで行われたファッションショーのメイクを担当するため。ブルガリアのデザイナーであるNeli Mitewa(ネリ ミテワ)氏のコレクション衣装にあわせてのメイク提案となりました。
Mitewa氏は、ブルガリアの首都ソフィアにあるコンセプチュアルデザイナーのプラットフォーム「IVAN ASEN22」の創立者で、これまで多くのファッションイベントを実施されています。今回は「ブルガリアから日本への文化的飛翔」をテーマにした、相互のインスピレーションを織り交ぜたファッション・インスタレーションとなりました。
衣装デザインは、日本の着物をベースにブルガリアならではの柄や刺繍、パッチワークなど、伝統的な両国の文化をオマージュした構成。
Mitewa氏曰く、着物は染織物を重ね合わせることで装飾が創り出され、絵柄と帯の色にポイントが置かれている一方で、ブルガリアの衣装では、刺繍、コインを連ねた飾り紐、タッセルといった要素が、装いに厳かさを添えているとのこと。
その相違点を生かし、シンプルな幾何学的形状を創り出しながら、構成要素や層を加えることでシルエットの複雑性を生み出し、お互いの良さを引き立てています。これらの独創的な衣装に合わせ、デザイナーのイメージに沿ってメイクを提案していきます。
ファッションイベントでのステージメイク
今回のバックステージでのメイクですが、以前から話は聞いていたものの最終決定したのが9月初旬。準備期間が3週間ほどしかなく、駆け足でイメージをまとめていきました。送られてきたイメージ資料を確認し、アーティストチームとカラーの打ち合わせ。日常のメイクとは違い、ショーメイクならではの魅せ方を検証していきます。
今回モデルとして起用されたのはブルガリアの俳優であるIrmena Chichikova(イルメナ・チチコヴァ)氏。ブルガリア国内では映画やテレビなどで幅広く活躍されているそうです。
ランウェイでのモデルはなんと彼女1名!そのため舞台裏に戻るやいなや早着替えをして、次の衣装ですぐにステージへ。メイクも衣装ごとの変更はできないので、はじめに崩れないようにしっかりとベースを施し、裏ではお直しのみで送り出します。
会場では一般の来場者が入場し、パビリオンとあわせてショーを楽しんでいらっしゃいました。
ショーの様子
デザイナーのMitewa氏と
ブルガリアのパビリオンの一部もご紹介
文化交流を経て向かう未来
今回の大阪・関西万博ブルガリアパビリオンは、「自然と共に進化する」をテーマとした空間でした。日中は白一色でしたが、夜になると白、緑、赤と国旗色にライトアップされていきます。
余談ですが、日本で初めてヨーグルトが紹介されたのが、1970年大阪万博のブルガリア館だそうです。当時の昭和天皇が試食され、とても美味しかったことから国内での研究が進み、「ブルガリアヨーグルト」が日本の食卓に根付いていったとのこと。ブルガリア、といえばまず思い浮かぶのがヨーグルトというくらい、日本ではお馴染みになっていますよね。ヨーグルト以外にも、ITや人工知能、もちろん私が研究に携わっているローズの産業も盛んです。ブルガリアンローズの認知も、同じように少しずつ日本に根付いていくと良いと考えています。
0コメント